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アルツハイマー型認知症 総論・危険因子・症状

この記事は、アルツハイマー型認知症の考え方と、アルツハイマー型認知症を起こしやすくする危険因子、アルツハイマー型認知症の代表的な症状についてまとめています。

アルツハイマー型認知症とは

アルツハイマー型認知症と”認知症”の違い

”認知症”は「単一の疾患を指す用語ではなく、認知機能が日常生活に影響を及ぼす程度に低下した状態」を指します。従って、認知症を来す様々な原因があるということです。この認知症のなかで、一番多い原因がこのアルツハイマー型認知症です。

アルツハイマー型認知症とアルツハイマー病の違い

アルツハイマー病という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。”アルツハイマー型認知症”と”アルツハイマー病”は似ていますが、意味が違います。実は医者の中でも”アルツハイマー病”と”アルツハイマー型認知症”の言葉の意味をよく分かっていない方も多いと思います。

先にアルツハイマー病のことを説明します。アルツハイマー病は「脳にリン酸化タウという蛋白質とアミロイドという蛋白質が蓄積し、徐々に神経細胞が死んでいく病気」です。1901年にアロイス・アルツハイマーというドイツの精神科医が、記憶障害を中心としたある女性患者さんを診察しました。その診療の際の記録が非常に克明で、のちの認知症研究に大きく寄与しています。その功績により、後世の研究者からこの病気を”アルツハイマー病”と名付けられました。この「アルツハイマー病によって神経細胞が死んでいった結果、徐々に記憶力を中心とした認知機能が低下し、認知症を発症した段階」を指す用語がアルツハイマー型認知症です。

すなわちアルツハイマー病は、まだ認知機能が全く落ちていない段階から始まり、その後数年~十数年以上かけて少しずつ認知機能が落ちてゆき、やがてアルツハイマー型認知症に至る疾患ということです。

アルツハイマー病は、「まだ認知機能が全く落ちていない段階から始まり、その後数年~十数年以上かけて少しずつ認知機能が落ちてゆき、やがてアルツハイマー型認知症に至る疾患」と言えます。

アルツハイマー病の代表的な危険因子

以下のような生活習慣が危険因子となると報告されています。

  • 喫煙
  • 低活動性
  • うつ
  • 中年期の高血圧
  • 糖尿病
  • 中年期の肥満

アルツハイマー型認知症の代表的な症状

記憶力低下

アルツハイマー型認知症の一番特徴的な症状は、記憶力の低下です。海馬(かいば)と呼ばれる、記憶の中枢が障害されることによって生じます。

記憶の分類にはいくつかありますが、アルツハイマー型認知症では、”言語化できる内容による分類”と”時間の流れに即した分類”が大事です。

”言語化できる内容による記憶”は、後天的な学習による”意味記憶”と、個人的な経験による”エピソード記憶”に分かれます。意味記憶は、いわゆる辞書的な記憶で、ハサミとは何か、眼鏡とは何かというような記憶です。エピソード記憶は、幼少期はどこでどのように過ごし、どのように成人となり、どのように仕事し、いつ頃誰と結婚したのかなど、個人の人生そのものの体験記憶です。アルツハイマー型認知症では、初期には”エピソード記憶”から失われていきます。ちなみに”言語化できない記憶”の代表は”手続き記憶”です。自転車の乗り方やあ泳ぎ方のように、体で覚える記憶のことです。

このエピソード記憶は、さらに時間の流れで”即時記憶”、”近時記憶”、”遠隔記憶”の3つに分類されます。まず即時記憶ですが、これは「電話番号を聞いてメモを取るまでなどの数秒間~数分程度の記憶」を指します。次が”近時記憶”と呼ばれる、数分前~数日前の記憶です。即時記憶との違いは、厳密に何秒という時間ではなく、間に他に注意を向ける出来事があったかどうかということが大事とされています。すなわち先の例を出せば、電話番号を聞いてメモを探している間に余計なことを考えずに済めば、1-2分でも即時記憶といえます。一方で、メモを探している間に別の人から声を掛けられ、その話を済ませてから、再びメモをしようとした場合は近時記憶といえます。最後の”遠隔記憶”は数日以上前の記憶とされ、近時記憶との時間的境目は曖昧です。

アルツハイマー型認知症では、エピソード記憶の中でも、この近時記憶から失われることが特徴的です。従って初期のアルツハイマー型認知症であれば、目の前の人との表面的な会話のキャッチボールは問題ありません。「最近は暖かくなってきましたね」→「そうですね」→「どちらかにお出かけですか?」→「ちょっとそこまで」などという会話は上手です。ただ、具体的に何月何日、あるいは何日前の話題になると、つじつまが合わなくなってきます。しつこく尋ねても「年も年だから」「普段からあまり気にしていないので」などと取り繕おうとする場面もよく見られます。病状が進行していくと、徐々に遠隔記憶まで障害されていき、やがて意味記憶も障害されていきます。

記憶障害は、ミニ・メンタル・ステート・イグザミネーション(Mini-Mental-State Examination;MMSE)や長谷川式簡易知的能力評価スケールといった神経心理検査でスクリーニング評価がなされます。どちらも様々な認知領域を浅く広く評価できるため、日常診療でよく使われている検査です。そのうえで、当院のもの忘れ外来ではADAS-Jcog、MoCA-Jなどでさらに記憶力の詳細な評価を行っています。

視空間機能障害

典型的には、記憶力の低下に続いて明らかになってくることが多い症状です。頭頂葉と呼ばれる、大脳のてっぺんのあたりが障害されることで生じます。

目で見た空間の把握が難しくなり、日常生活では”道迷い”として現れてきます。初期には初めての土地で自分がどこにいるのか分からなくなり、徐々に慣れ親しんだ土地でもどこにいるのか分からなくなってきます。そのため、いったん自宅を出た後自宅に戻れなくなっていきます。

診察室の場面では、医師がキツネ、ハトの手の形を作り、これを真似してもらうよう指示することで、簡便に評価ができます。この記事をご覧になっている皆さんに、もし身近に認知症かどうか心配な方がおられるようでしたら、試してみてはいかがでしょうか?この際にはあくまで”真似をしてみてください”とだけ言い、キツネの真似とかハトの真似とは言わないことがポイントです。形が崩れていたり、表裏が逆だったりすると、視空間認知機能が低下している可能性があるかもしれません。

失語

失語とは、脳の病変によって起こる言語障害を指します.比較的若年で発症したアルツハイマー型認知症では、記銘力障害に比して、この言語障害が目立つことがあることが知られています.

意欲の低下、怒りっぽさなどの精神症状

アルツハイマー型認知症では前頭葉という、大脳の前方部の機能が低下する例も珍しくありません。前頭葉は司る機能によってさらに細かく分類され、意欲を司る部位が障害されれば意欲が低下し、理性を保つ部位が障害されれば、ささいなことで怒りっぽくなります。

アルツハイマー型認知症の症状は、「中核症状」と呼ばれる”個人差はあっても少しずつ進んでいく症状”と、「行動・心理症状」と呼ばれる”人によって生じたり生じなかったりする症状”に分けられます。精神症状はこの行動・心理症状に該当し、ご家族が最も困る症状であると同時に、医療者・介護者の介入で大きく改善させうる症状でもあります。

参考文献

  • 認知症疾患診療ガイドライン2017

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