
日本では、介護が必要になった高齢者が、住み慣れた地域や住まいで尊厳ある自立した生活を送ることができるよう、質の高い保健医療・福祉サービスの確保、将来にわたって安定した介護保険制度の確立などに取り組んでいます。
介護保険制度のもとで、実際に介護サービスを受けるためには、要介護認定という手続きを経る必要があります。この調査過程で、遺言能力の鑑定に役立つ情報が得られます。
認定調査は、以下の3種類の調査票から構成されています。
認定調査票(概況調査)は、以下の項目から構成されている。
I 調査実施者(記入者)
II 調査対象者
III 現在受けているサービスの状況(在宅利用・施設利用)
IV 置かれている環境等(家族状況、住宅環境、傷病、既往歴等)
認定調査票の「基本調査」の調査項目は、以下の第1群から第5群によって構成されている。
いずれも重要ではあるが、遺言能力の鑑定という点では、第3群は認知機能の程度を示す得点であり、第4群は認知症等による行動障害の有無と程度を
示す得点となっており、特に重要なポイントとなることが多い。
第1群:身体機能・起居動作 13項目
第2群:生活機能 12項目
第3群:認知機能 9項目
第4群:精神・行動障害 15項目
第5群:社会生活への適応 6項目
その他:過去14日間にうけた特別な医療について 12項目
上記の認定調査票(基本調査)の項目(群)の分類に基づき構成されている。
なお、記載する場合は、認定調査票(基本調査)の項目(群)の分類ごとに基本調査項目番号を括弧に記載した上で、具体的な内容を記載する。
認定調査や主治医意見書では、「認知症高齢者の日常生活自立度」を記載する欄があります。
この認知症高齢者の日常生活自立度は、一定の判断基準に基づいてランク付けされます。
遺言能力を鑑定する際に特に注目する点が、ランクIIは「誰かが注意していれば自立できる」と判断される程度なのに対し、ランクIII以上では「自立」という文言が無くなる点です。
介護認定調査は、介護認定結果の更改のたびに必要になります。したがって、同一の個人においても、時系列に沿った情報が手に入るというのが、遺言能力鑑定における大きな利点となります。
介護認定調査がなされるタイミングで、主治医意見書も作成されます。これらの情報の経時的変化や齟齬の有無を、病態に応じて鑑定していくことになります。
遺言書が作成された時点で、認知機能が保たれていたのかどうかを検討し、遺言能力の有無を評価していきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
認定調査員テキスト2009改訂版(平成30年4月改訂)
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